(2) 青葉(中野)

支店:都内では飯田橋、鍋屋横丁、新宿御苑前、蒲田

御存知「青葉」である。この店については、もはや多くを語る必要はあるまい。語るだけ野暮だろう、と思いつつ、ついつい饒舌になってしまうのが、ラーメン好きの悲しい性。

逸る気持ちを抑えて簡単に紹介すると、ラーメンのテイストこそ全く違う(共通点は、魚介類ベースということだけ)ものの、現在、前述の新宿「麺屋武蔵」と互角に張り合えるだけの人気と実力を兼ね備えた唯一の店がここ「青葉」だろう。

つい5年ほど前は中野の一有名店に過ぎなかったこの店が、あれよあれよという間に全国区までに上り詰めた、まるでラーメン界のサクセス・ストーリーを絵に描いたような店である。5年前の「青葉」を知っている僕からすれば、今の大行列がまるで嘘のような出来事である。

現在、全国はおろか東京都内だけを眺めてみても色々な店がある。まさに百花繚乱といった感じだ。そのような状況で、見事なまでのサクセス・ストーリーを体現する。言葉では言い表してしまうとそっけないが、極めて困難なことだろう。この困難な所業を「青葉」は見事にやり遂げてみせたのである。「理由は?」と問われれば「超一流のラーメンを提供するから」と答えるほかないが、ただそれだけではない。旨い店も、都内には数多存在する。そのような中で「青葉」がひときわ強く光り輝いた理由は、きっと、この店が魚介類という素材の持ち味を最大限に活かした一杯を作り上げることができたこと、そして、そのような実力に裏打ちされた店主の勉強熱心な姿勢と独創性だろうと考えている。

「青葉」は、飯田橋を皮切りとして、最近立て続けに数店舗の支店を出したが、僕としては、やはり青葉を食べたことがある人もそうでない人も、是非一度、中野の本店で食されることを強くお薦めしたい。ここで誤解のないように申し上げておくが、「青葉」は支店のクオリティが高いことでも有名であり、店舗拡大型の他店が陥りがちな「支店<本店」といった公式は当てはまらない。それを承知で本店を薦めるのは、細い路地で並ぶ本店ならではの雰囲気を是非とも味わっていただきたいからである。それは仏教徒が天竺詣でに行くのに等しい。まさに「青葉」本店は、ラーメン好きにとってはひとつの聖地なのである。

ちなみに、本店は中野サンモールのマツキヨを右折すると見えてくる。ただしここで一点注意。この方法で行くと、おそらく店の前まで到達しても行列は見えない。ここで、初めての人は「おお、ラッキー。今日は空いているじゃないか!」と思ってしまうのである。しかし・・・・。まぁ、これ以上は敢えて言わないことにしよう。是非、実際に足を運んでみていただきたい。

さて、肝心のメニューと味についても書いておこう。「青葉」についても一通りのことは他のサイトで飽きるほど書かれているので、ここでは、あくまで主観に基づいた感想を中心に簡単な説明を行うに留めたいと思う。

メニュー構成は非常にシンプルで、ラーメンとつけ麺、それに各種の具が一通り入った特製ラーメンと特製つけ麺の4種類のみ。名物の味付け卵が付いてくるので、「特製」が断然お薦め。

スープは、煮干し、サバ、カツオで構成される出汁を白湯スープにブレンドするダブルスープ(2つの寸胴で2種類のスープを作り、それを最終段階でブレンドしたスープ)である。この手法を使えば、各種素材の持ち味をより多く引き出すことが可能なのである。2003年現在、このような手法を使う店はそれ程珍しくはなくなったが、確か「青葉」がこの手法の嚆矢だったかと記憶している。もちろん「青葉は」この手法のメリットを熟知しているものと思われ、スープは非の打ち所のない程に美味い。口に含んだ瞬間に魚介類と柔らかな白湯の旨味が、味覚を最大限に刺激し、あとは、ひたすら丼が空になるまでスープを飲み続けるのみである。

中細縮れ麺の麺も、スープを存分に絡め、やや硬めの食感も申し分ない。最近はスープと麺の組み合わせに留意する店が増え、スープを絡める麺は、物珍しい存在ではなくなってきたが、そのような事情を考慮に入れたとしても、「青葉」の麺のレベルの高さは驚愕に値する。分量も女性に優しい「やや少な目」であり、食べ手を選ばないだろう。

具は、煮玉子の質の高さは伝説的なものがあり、他店がこぞって「青葉」のそれを模倣したと言われるほど。白身を箸で割ると、絶妙な加減の黄身が顔を出す。麺に黄身を付けて食べると、怖ろしく美味い。まさにザナドゥ、桃源郷である。チャーシューの完成度も高い。ここまで、麺とスープの完成度が高い店ならば当然であるが柔らかな上質の豚ロース肉が濃厚に舌にまとわりつき、魅惑の一時を過ごさせる。

ラーメン、つけ麺ともにスープ、麺、具ともに申し分なく、完璧な仕事。食べている内に、知らず知らずのうちに丼を空にしてしまい、スープの少なさを嘆くという稀有な逸品である。

評価は、①麺15点(つけ麺は13点)②スープ19点(つけ麺は18点)、③具4点(味は完璧であるが、少なすぎるのが玉に瑕・・・)、④バランス10点(芸術的)、⑤将来性8点(完成度が高すぎるので敢えて)の計56点(つけ麺は53点)。

まさに驚異的なスコアである。

他店に較べて控えめな分量が唯一の泣き所。「青葉」に大盛りというシステムは存在しないのである。このクオリティだったら、1.5倍程度の分量があっても完食する人は多いと思うのだが、いかがだろうか。