走らない人が走り始めるとき (19)

東京マラソンを走る人 (前篇) (2022年3月6日)

5時15分に起床。朝食はマラソンの日恒例の餅である。サトウの切り餅3つを砂糖醤油で。オレンジジュースを飲む。あとヨーグルトを食べようと思ったら冷蔵庫のストックが切れていた。食べ終えて大切な排便(これを済ませておかないとハラハラしながらマラソンを走ることになる)。

天気アプリによると今日の東京は晴れ。最低気温4度最高気温14度の予想である。午後になって暑くなりそうだが、朝極端に寒くなさそうなのは助かる。なにせ今回有料の手荷物預かりサービスを申し込まなかったので新宿都庁前のスタート地点には走る恰好そのままで行かなきゃならないからだ。

身支度をする。七分丈のタイツ、ランニングパンツ、5本指のランニング用ソックス、両乳首にバンソウコウを貼り、半袖のランニングTシャツ、アームカバー。手袋は走ってるうちに暑くなるだろうからパス。代わりに小さい使い捨てカイロを2つ開封し、パンツの両ポケットに1つずつ入れる。塩タブレット3つをパンツの右後ろの小さなポケットに。鼻水対策の小さいタオルハンカチを右ポケットに。ランニング用ポーチの前部にスマホ、後ろのポケットに補給食(スポーツ羊羹2本、スポーツ用ジェル3袋)、サングラス。コロナが流行りだしてからなんとなく付けるようになったネックゲーター(ネックウォーマーの暖かくないやつ。伸ばして口の周りを覆うこともできる。暑い時には水に濡らすと涼しくなる。日焼け対策にもなる)。せっかくの東京マラソンを耳でも楽しみたいと思い、これまで3回のフルマラソンで常に使っていたワイヤレスイヤフォンは今日は持たないことに決めた。

リュックにメガネと貴重品を入れ、上着を着て、ランニングシューズをどちらにするかまた悩むが、結局堅実そうなズームフライ3を選ぶことにし、靴紐に一昨日受け取った計測チップを取り付けて6時過ぎに家を出た。まずは内幸町の自分が勤務するオフィスに向かう。

7時にオフィスに到着。走る時に使わないメガネと貴重品、上着をここで置いて、忘れ物がないかもう一度チェックをして、7時40分にオフィスを出た。上着がないとさすがに少し寒い。でも凍えるほどではない。日比谷公園の入り口で少し準備運動をして、公園を突っ切って東京メトロの霞ヶ関駅へ。丸の内線に乗ると、そこには今から東京マラソンを走る人がいっぱい乗っていて少し驚く。

西新宿駅で下車し、あとはボランティアの方の案内に任せて会場の指定された集合場所へ向かった。8時45分のゲート締切時間までしばらく時間があるのでどこか暖かいところはないかと探していると、ゲートの向かいにあるオフィスビルがありがたくも開放してくれているのを見つけロビーで準備体操。すごい人だ。そうか、2万人だもんな。これまで自分が出た大会の100倍を超える規模なんだ。途方も無いな。

ここで一緒に走る友人2人と合流した(もっと速い記録を持っているもう1人の友人だけは別ゲートだったためゴール後まで会えなかった)。時間ギリギリに最後のトイレに行って、ビルを出ていよいよゲートをくぐる。

9時10分のスタート時刻までまだ20分もあるので、冷えないようにその場で体を動かしながら当初決めていた今日のレースの作戦を反芻する。目標は3時間50分を切って自己ベストを出すことだ。自己ベストを出した前回の大会で1キロの平均タイムが5分26秒だったから、今日は5分20秒から25秒の間で最後まで通すというのが作戦の内容だ。が、こうやって書くと作戦というほどのものでは全く無いことがわかる。

あまりのたくさんの人出や、マーティン・フリードマンのギター演奏やらに心が浮わつき始め、そこへスタート直前、都庁の周辺にいた日本なんとか党(忘れた)の街宣車から、「みなさん、マスクを外しましょう!マスクは認知能力を低下させます。マスクから出る有害な化学物質が健康に悪影響を与えます。大人がマスクを外さないから、子供たちもマスクを外せなくて大変な思いをしてるんですよ!」というすごいアナウンスが大音量で流れてきて混乱しているうちにレースがスタートした。