虚々実々新聞 第4号 (11/09/1996)

不正出張疑惑 ~腐敗したW歌山支店の内情

官公庁の不祥事が相次いで表面化している折もおり、ここW歌山支店においても不正出張の疑惑が持ち上がっている。
 
去る十月、W歌山支店営業部の社員が名古屋へ出張した。出張目的は、全国の支店合同の営業事例発表会であり、出張したのはK林主査、A池社員、F形社員の3人である。このうち、K林主査、A池社員についてはそれぞれ発表傍聴者、発表者という重要な使命を帯びていたことが確認されている。
 
問題は3人目のメンバー、F形社員である。
 
「私の役割は、A池社員の発表をより効果的かつドラマティックなものにするためのパソコン操作にあった。彼の発表はまことに素晴らしかったが、私の的確で洗練された操作がなければ悲劇的な失敗に終わっていたことだろう」

と渦中のF形社員は説明する。が、しかし実際のところ彼は、
 
「A池社員から十メートル以上離れたところでマウスのクリックを十数回行っただけだった」 (発表会関係者)

ことが明らかになっている。これについてF形氏は、
 
「「ものごとの表層だけを見て批評する者は重大な過ちを犯す」と大江健三郎はノーベル賞授賞式の席上で語った。あなたがたはまさにその重大な過ちを犯している。発表当日に私の行ったマウス・クリックはそんじょそこらのクリックとは次元が違うのだ。百分の一秒単位まで計算されたクリックのタイミングは日夜欠かさぬトレーニングの成果である。さらに発表の一週間前からは、右手人差し指一本による指立て伏せをトレーニング・メニューに加えていたことをここで明らかにせねばなるまい」

と一気にまくしたてた。

いずれにせよ、今回の事件が「F形社員月給泥棒説」を唱えるグループの勢力拡大に強い追い風となることは必至の情勢である。