虚々実々新聞 第3号 (09/17/1996)

「カトちゃんヒゲ」事件発生

某月某日。先輩のA池氏に同行してお客様宅に訪問していたF形氏に思わぬアクシデントが発生していたことが判明した。A池氏はお客様のD氏に対し、長時間にわたってサービスの概要を説明していた。そのあいだD氏はずっと、F形氏の顔と胸につけた名札を何度も見比べていたのである。
 
「以前からしばしばブラッド・ピットに間違えられ、不快な思いをしていたので、「またか」と思いましたよ」

とF形氏は苦々しげに告白する。
 
そのときD氏はややためらいがちに次のように訊ねた。
 
「君の名札のヒゲはなんだね?」
 
唐突な質問に面食らいながらもかろうじて自身の名札を確かめてみると顔写真の鼻の下部分に「カトちゃんヒゲ」が描かれていた。あまりの出来事にF形氏は絶句し、A池氏は苦虫を噛み潰したような顔を隠さなかったらしい。
 
その後の調査により、「カトちゃんヒゲ」は同僚N田氏の悪質なイタズラと判明。N田氏もこれを認めた。事件後、F形氏は報復措置として、N田氏がデスクに飾ってある鶴田真由の写真にヒゲを描くことを宣言。これに対してN田氏は写真を鍵の付いた引き出しに急遽避難させるなど、両氏の関係は急速に悪化している。
 
これについて、国連の安全保障理事会は緊急の調停案を発表した。またシラク仏大統領が仲裁に乗り出す動きを見せており、事件は一挙に国際問題へと発展しつつある。が、一方で「争いのレヴェルは小学校三年生並み」とのクールな論評が一部で存在することも見逃せない。

連続エンスト事件発生

某大手通信会社W歌山支店営業部の高度商品担当は7、8台の社用車を所有している。そのうち約半数がマニュアル車である。

先日、助手席にM谷氏 (18) を乗せてF形氏 (24) が営業部のある別館とW歌山支店本館の間をマニュアル車で運転移動中、わずか数キロメートルの距離にもかかわらずエンストを2回犯していたことが判明した。
 
これによりW歌山支店のイメージは9%(虚々実々リサーチ社調べ)低下した模様。また事件後、W歌山市内の小学生200人に対して緊急に実施された電話アンケートでも、尊敬する会社として「通信会社」と回答した割合は11%と前回よりも4ポイント低下し、事態の深刻さを物語っている。
 
事件直後、F形氏は記者団に対し以下のように語っている。

「日頃、運転は専属ドライバーに任せているのでマニュアル車は少々苦手なんだよ。まあ「色男、金と力はなかりけり」というやつだな。それにしてもまあ、なんだな、ミッションの運転はまことに難しい。これがほんとの「ミッション・インポッシブル」だな。ぬは。ぬはははははは」

しかし、F形氏が満を持して発したとっておきのアメリカン・ジョークにも記者たちの笑いはまばらで、一説ではこの瞬間、記者会見の行われたホテルの会場では室温が2度下がったという。