(13) 麺舗十六(要町)

要町近くの路地を入ったところにある、隠れ家的な一軒。

メニューは、シンプルに太麺で作られるラーメンとつけ麺、そして細麺で作られる塩そばの3品。あとは、これらの3品に肉(チャーシュー)や味付け卵などのトッピングを入れるかどうか選択するシステムを取っている。

価格の安さと、量の多さには驚くばかりであり、ラーメンは何と490円。500円玉でお釣りが来る有難さである。ちなみにつけ麺は550円。塩そばも550円である。

この価格にして、また量も凄い。ここは「大増し、大、多め、並、小」の5種類の分量を用意しており、その内「多め、並、小」の3種類は、どれを頼んでも値段は据え置きである。ちなみに「小」で普通のラーメンと同じ量、「並」になれば普通のラーメンの2倍、「多め」で普通のラーメンの2.5倍程度の分量を誇る。「大増し」と「大」は通常の価格に160円上乗せされるが、これは一体どれ位の量なのだろうか・・・。気が遠くなってくる。

もちろんこういう特典がある店だから行列も待ち時間も長い。僕は12:50から行列に加わったが、最終的に席に着くまでに1時間、そしてメニューが供されるまでに、さらに15分の時間を費やした。結局、食べ始めたのは14時過ぎということになる。

ここは、つけ麺とラーメンの両方がウリの店であり、ネットでもラーメン本でも、そのどちらもが紹介されているため選択に迷ったが、結局「つけ麺、あつもり(麺を水で締めずに温かいままで食べること。食べている内にスープが冷えないという特典がある)で肉入り、多め、を味付け卵つき」で注文した。これでも850円。

出てきた一杯は、ラーメンのドンブリに麺が溢れかえってこんもりと盛り上がっているという凶暴なビジュアル。麺の量は400グラムはあるだろう。これは通常のラーメンの3倍近くに相当する分量だ。こういうビジュアルを見慣れていない人間であれば、それだけでも戦意を喪失してしまうのではないだろうか。400gとはそれくらいの分量である。
スープは、鰹節や醤油をふんだんに使い、それに胡椒や味醂で味付けした見た目にもコッテリ系を想起させる一品。特筆すべきは、他に類がないほどに濃厚な茶褐色の溜まり醤油。甘みが強くマイルドな醤油の風味が食欲を増進させ、プリプリと食感のよい自家製の極太麺がスルスルと胃袋の中に収まっていく。またこの自家製麺の味がよい。鹹水臭さなど微塵もなく、それでいて多量の水分を含むこの麺は、店主の創意工夫の跡を伺わせる佳作である。

肉、麺、スープの三位一体が醸成するハーモニーが爽快の一言。知らず知らず夢中になって食べ進めている間に麺が減っているというイメージだ。旨いラーメンとは、自分でも気が付かない内に丼を空にしてしまうものである。ここもその例に漏れず、客はいつの間にか空っぽになった丼を見て「自分にもこれだけの食欲があったのか」と驚くことになるだろう。

ここは、太麺を使ったつけ麺を提供する店の中で、珍しく「大勝軒」の色を打ち出していない変わり種として貴重な店である。

営業時間が11:00~16:00、しかも日曜日が休業日なので、ここで食べるためには、平日がダメならば、土曜日の昼を狙うしかない。しかも僕の経験では

(1)15:00に店に到着して、あえなくフラれたことがある。
(2)今回も、ボクが店内に入ったときに並んでいた行列の最後尾で打ち切りになった。

というようなことから考えると、土曜日は少なくとも14:00前には到着しないと危ないだろう。この店に向かわれる方は参考にしていただきたい。

評価は、つけ麺に限れば、
(1)麺12点、(2)スープ15点、(3)具4点、(4)バランス8点、(5)将来性9点の計48点。

荒削りさが随所に残り、やや味が単調であることから、後半になると飽きが来る可能性を否定することができないものの、池袋西部では間違いなくトップクラスの店であろう。お薦め店である。

(最新実食日02年10月)