おノロケのない新婚の旅 フランス篇 (1)

7月22日午後 パリ

午後7時ごろパリのシャルル・ド・ゴール空港に着く。まだ2人ともチュニジアでの興奮の余韻が残っている。エール・フランスのシャトルバスでパリ市内へ。40 分ほどで市内の西側、ポルト・マイヨーというところに着いた。これから4泊5日のパリ観光、その拠点となるホテル・メリディアン・エトワールは目の前である。スーツケースをゴロゴロと転がし、フロントでチェック・イン。なぜか中東からの観光客がやたらにたくさんいる。部屋はそれほど大きくないけれども十分な広さ。清潔である。いかにも都市型のホテルという感じで無駄がない。

一休みしてさっそく街へ出ることにする。午後9時とはいえ、やっと薄暗くなってきたなという程度。ちょっと湿気を感じるが不快というほどではない。おおここがシャンゼリゼ大通りか。するとこの街路樹はマロニエなんであろうか?と、私はおのぼりさん丸出しではしゃぐ。パリは4回目だか5回目だかの奥さんは至って冷静だ。そして凱旋門。うーん。テレビなんかで出てくるあの凱旋門そのままだ(あたりまえだ)。パリの街はあまりにも有名すぎて、なんだか初めて来たという気がしないのだ。変な気分である。

当然のことだが、チュニジアとは全然違う。ここはまぎれもなく大都市なのである。大阪や東京といういつも慣れ親しんだ街との共通した空気が感じられ落ち着く。すばらしい旅になりそうな予感・・・。

だが、その予想はいとも簡単に裏切られた。パリ到着わずか2時間にしてさっそく奥さんと大喧嘩。原因は、おそらく「新婚旅行で夫婦ゲンカが起こる原因ベスト3」には間違いなく食い込んでくるであろうお金に絡むものであった。シティバンクに預けてある米ドルがおろせないのである。海外のキャッシュ・ディスペンサーは故障がよくあると聞いていたので、いくつか試してみたのだがどこも駄目。とどめにシティバンクのATMででもおろせない。「あなた、預金が0よ」などとふざけた表示がでてくるのだ。「なななななめんなパリ!くそ。ちょっとフランス語が話せないと思ってバカにしやがって(←完全な八つ当たり)」などと怒っていると、「ちょっとあんたどうなってるのよ。プンプン」と奥さんも怒りだし、非常に険悪なムードとなった。

結局公衆電話から日本のシティバンクのフリーダイヤルに国際電話し、事なきを得た(米ドルで預けていると、シティカードで引き出せないのだそうだ。その電話で直接円に両替えするよう指示を出し解決。が、おい、そんな不便なルール撤廃してくれよ、シティさん!)。

けれども奥さんの怒りはおさまらず、夕食もとらずに二人でホテルに戻る。「だいたいあなたは事前の準備が甘い」「最後に解決したから別にいいやん、とか思ってるでしょ」と痛いところをつかれまくる。そのとおりなのだから返す言葉がない。2時間弱が経過。なんとか関係修復し、あらためて夕食をとるためホテル近くのレストランへ行く。

ちょっとオシャレなフランス料理店って感じの店構え。しかしフランス料理店もなにもよく考えてみたらここはパリ、こんな店ばっかりなんであった。サラダと魚料理を適当に頼んで、しばらく待っていると出てきたのがコールスローやらスイカやらパプリカやらが無秩序に盛られ、その上にシナモンパウダーがどかっとまぶしてある「シェフの気まぐれにもほどがあるサラダ」。しかも味付けななぜか酸っぱい。こんなカオスの極みのようなサラダなのだが、不思議と美味い・・・はずがなくま、まずい。しかもとどめに魚料理は生ガキのテンコ盛り。病み上がりにこんなもん平らげた日にはアタらないほうがおかしい。2つほどで食べるのを止め、ビールだけはきっちり呑んで、早々に退散。

ハンサムでさわやかなウェイターは、ほとんど食事に手をつけなかった二人にきわめて不満顔であった。だからといってあんな爆弾みたいな危険物、ここで食うわけにはいかぬ。ホテルに帰ってシャワーを浴びて早々に寝る。