(25) 平太周(板橋本町)

往年の大名店、常盤台「環七土佐っ子」のスタッフが一昨年に独立・開業した店。場所は、都営三田線の板橋本町駅を下車して、本町の交差点から環七を高円寺方面に徒歩で2、3分といったところだろうか。車で向かうには便利だが、電車などの公共交通機関を使う者にとっては、正直やや不便な場所にある。

エビスさんの絵が描かれた白いビニール屋根が目印。いかにも一昔前に東京ラーメン・シーンを席巻した「環七通りのラーメン屋」といった感じの風体である。最近はこのような感じの店を見掛けることも少なくなってきた。だから「平太周」のような店構えを見るとなんだか懐かしい気持ちになってしまう。

午後10時45分入店。今回で3回目である。先客は家族連れ4名と1人客が2名。合わせて6名である。カウンター12、3席程度の店なので約半数が入っていることになる。

食券制で、メニュー構成は03年2月現在、「ラーメン」「塩ラーメン」「特製ラーメン」「つけ麺」そして「味噌ダレつけ麺」の5種類。その中で「特製ラーメン」と呼ばれているものが「環七土佐っ子」のラーメンを正式に継承するものである。

「特製ラーメン」は、デフォルトでチャーシュー3枚とゆで卵が入り、価格は750円。確か、これと同じだけの具財が載る「環七土佐っ子」の最高額メニューであった「チャーシュー、卵入りラーメン」は900円だったと記憶しているので、それより150円も安いことになる。これは驚くべきコストパフォーマンスの高さである。

前回食べに行ったときには、「特製ラーメン」だけは大盛りの注文は不可だったのであるが、今回は他のメニューと同様、大盛りの注文も可能となったようだ。

店内のビラには「特製ラーメンは平大周のルーツである屋台の味を再現しています」という紙が貼られている。言換えると要するに「「環七土佐っ子」の味を再現しているよ」ということだ。土佐っ子系と呼ばれる一群の系列の中でも、ここまで土佐っ子を明確に意識したプロモーションを展開させているところも他に類を見ない。

3回目の訪問ともなればそろそろ他のメニューも注文していい頃なのに、ここではなぜか、吸い込まれるように「特製ラーメン」のボタンを押してしまう(他にも「味噌ダレつけ麺」など人気の高いメニューもあるのに)。これも僕の「環七土佐っ子」に対する深い思い入れの現れなのだろうか。「土佐っ子」を深く愛していた人間であればその気持ちを理解してくれることと思う。

そういうわけで、今回も「特製ラーメン」の食券(白)を購入。麺は「環七土佐っ子」時代から「硬め」で注文することにしていたので、それに倣って麺硬で注文した。

さて、ラーメンの作成工程もチェックしたので、ここで詳細を述べる。

(1)まず、丼に醤油のようなタレを大さじで2杯ほど入れる。
(2)次に、背脂を「今、まじまじと見てみるとトンでもなく大胆」に振りかける。
(3)(2)の工程が終了すると同時に、褐色のメンマと刻みネギを放り込む。
(4)白濁したスープを丼1/2程度になるまで注ぎ込む。
(5)激しく湯切りを施した中細ストレート麺を丼に放り込む。
(6)ここで、さらに、背脂をトンでもなく大胆に振りかける。
(7)チャーシューと卵を入れて終了。

(4)と(5)の工程の前後には自信が持てないが、概ねこんな感じである。「環七土佐っ子」もこれと全く同じやり方でラーメンを作っていたので、材料にさえ違いがなければ、理論上は「土佐っ子」と全く同じものが完成することになる。

期待に胸を膨らませつつ、供された待望の一杯は確かに往年の「土佐っ子」を彷彿とさせるもの。スープの表面が背脂の色で一見白く見えるのだが、かき混ぜると醤油の褐色とブレンドされるサマも「土佐っ子」同様である。

チャーシューは、「土佐っ子」よりも若干ではあるが分厚い煮豚を使用しているようだ。卵は、何の味つけも施していないただの茹で卵であり、今日となっては、旧式の感があるが、「土佐っ子」もこれと同じくただの茹で卵だったので、ついつい許してしまう。

さて、肝心の味の方であるが、麺は、「土佐っ子」同様「つるや製麺」の「中細ストレート麺」を心持ち硬めに捌いたものであり、鹹水の雑味もなく、茹で加減も良好である。いかにも「土佐っ子」の味を熟知したベテランならではの仕事である。

スープは「土佐っ子」と同様、下手をすれば吐いてしまいそうになるくらいのコッテリさ加減。甘辛い独特の茶褐色の醤油と白い背脂のハーモニーが、独特の濃厚でコクのある旨味を創出し、本当に味わい深い。

具は、茹で卵にはもちろん見るべきものはないが、チャーシューは心持ちぶ厚めながらも、柔らかい部位のみを醤油ダシに漬け込んだ「土佐っ子」譲りの舌の上でとろける逸品であり、文句は出ない。

麺とスープのバランスも、一見スープをあまり絡めないストレート麺に違和感があるように思われるものの、後から考えてみればそれも、濃厚すぎるスープに対処するための工夫なのかと納得させられるところがあり、よろしいかと思う。もちろんここまで個性を前面に打ち出せば好き嫌いが別れることは否めないのだが。

ひとつ難点として、スープの中に大量に入っていると思われる胡椒はいかがなものなのだろうか。胡椒の味が、妙に舌に残るような気がするのである。全く入れるなとは言わないが、せめてもう少し分量を減らした方が胡椒独特のエグ味が減殺されて、スープの良さがより際立ってくるのではなかろうか。

評価は、(1)麺12点、(2)スープ13点、(3)具4点、(4)バランス7点、(5)将来性7点の合計43点。

僕はこの手の背脂たっぷりのコッテリ系ラーメンは嫌いではないし、「平太周」のそれは、コッテリ系の中でも相当に美味しい部類に属すると思うので高めに評価した。ただし先にも書いたとおり、人によって好き嫌いが激しく別れることは否定できないと思う。その点はどうか御了承願いたい。

(最新実食日03年2月)