虚々実々新聞 第9号 (7/12/1997)

W歌山支店営業部女性新入社員、セクハラ事件で提訴へ

かねてからセクシャルハラスメントの横行が噂されていたW歌山支店で、営業研修中の女性新入社員が同支店営業部外商第一担当の男性社員を相手取って訴えを起こし話題を呼んでいる。

今回提訴に踏み切ったのはW歌山支店新入社員のM川氏 (23) 。毎回渦中の人物との独占インタヴューに成功している虚々実々新聞社が、先日またもやM川氏との独占インタヴューに成功した。

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「事件の概要を教えて下さい」

「六月二十八日午前十一時頃、JR特急「くろしお6号」車内において、A池さんはわたしに某週刊誌『金曜日』の女性や男性のヌード写真が掲載されたページを見るよう強要しました。さらに、「お前はどの写真に一番エロチシズムを感じるんだ」などと質問しました。私は最初、答えることを拒否していましたが、彼は「研修期間が終わった後もこんなド田舎に残りたいのか?」と報復をほのめかしたんです」

「それでしかたなく答えたんですね?」

「ええ。ほんとにしかたがありませんでした」

「あなたが答えた写真はどのようなものでしたか?」

「私が指し示したのは、女性の×××××が×××している写真でした」

「ほほお。×××××が×××している写真ですか。それはまたなんともいやはや」

「思い出したくもありません。その日は若手社員みんなで一泊二日の研修旅行だったんですが、楽しいはずの旅行はおかげでメチャクチャになってしまいました」

「その日以来相当な後遺症に悩んでいらっしゃるとか」

「ええ。あれ以来、眠れない夜が続いています。眠ろうとするとA池さんのあの恍惚とした表情が幻影のように私を悩ませるのです。もうお嫁に行けません」

「それで今回法的手段に訴えることを決意されたわけですね」

「そのとおりです。私は多大な精神的苦痛を受けました。この苦痛を癒すため、セクハラ行為をしたA池社員と彼のような野獣を野放しにしているW歌山支店に対し二億七千万円の賠償を要求します」
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M川氏の訴えを受けてW歌山地方検察局は調査に乗り出し、A池氏 (26) は現在任意で取り調べを受けている。調べに対し彼はそうした事実があったことを概ね認めているが、セクハラとの訴えに対しては

「(セクハラ行為という)認識はなかった。あのときの彼女は明らかにノリノリであり、楽しい会話のキャッチボールが行われたと記憶している」

と容疑を全面的に否認した。

一方、当日同列車でたまたま近くに乗り合わせていたF形社員とN田社員に対しても参考人として事情聴取が行われている。彼らもまた「(M川社員が)乗りに乗っていた」と話し、

「あの場でイニシアチヴを取っていたのはむしろ彼女の方です。特に一番エロチシズムを感じる写真を指し示す瞬間の彼女はまさに輝きを放っており、それはまるでオーラのように彼女全体を覆っていました。また彼女はその写真に人差し指を強く押しつけながら、自分がいかにしてそれを選択するに至ったかを力説したほどでした。あのときの彼女の表情を思い出して夜も眠れないのはむしろ私たちのほうです」

と証言している。

これらの証言はM川氏の形勢を急速に不利にしている模様だが、いずれにせよW歌山支店のスキャンダル史にあらたな一ページを加えることは必至である。

同支店総務課では、この事件をきっかけにした総会屋の介入を警戒しており、株主総会が終わった直後にもかかわらず早くも来年度の株主総会対策に向け、本社の総務部と連日意見交換を行っているとの未確認情報も入っている。

ここで一歩対応を誤れば「「第二の野村證券」になりかねない」(経済アナリスト)との観測もあり、情勢は予断を許さない。